努力と工夫で一年通じてアスターを生産
「連作は困難なアスター」に親子二代で挑む
苗は自ら育て、独自ブランドに
田川市にある有限会社グロウテックの社長、佐野孝之さん(42)。「アスターは連作できない花だけど、誰もやっていないアスターの連作に成功したら産地になれると、父が18年前会社を興したのが始まりです」と振り返ります。当時大阪でサラリーマンをしていた佐野さんは、父親を手助けするためUターンしました。


12棟あるハウス内には、「高設隔離ベンチ」が並んでいます。土ではなく、粒状のオアシスを利用した養液栽培。苗の間に水やり用の穴が開いたチューブをはり、養液を自動的で流します。最初の3年間は上手くできたけれど、その後まったく生育しなくなってしまいました。そこで、一気に培地を入れ替えたり、消毒を見直したり、試行錯誤を繰り返しました。今では一年を通じて栽培できるようになり、「TGアスター」ブランドで東京や大阪の市場にも出荷しています。


年間数百万本のアスターを出荷する佐野さんですが、苗はすべて自分でつくります。「人の手で徹底して品質を管理し、良い苗をつくります。新品種を育てられるのも強みです」と佐野さん。ポンポン咲きでかわいらしいココットスカイ、ブルーの花びらの色が美しいステラトップブルーなど常に10種類ほど栽培しています。


「消費者あっての生産者」
花をつくる喜び、飾る喜びをつなぐ
5年前からはハーブやリーフ、枝物などのナチュラルグリーン栽培も開始。ハウスの横には防風林を兼ねたアカシアやユーカリなどが長さ200メートルほどに植えられています。ドライフラワーも試作中です。「多くの花を栽培すると経営の安定につながります。消費者が何を望んでいるのか、市場調査にもなります。消費者あっての私たち生産者。これからも付加価値を高めていきたい」と語ります。
経営者として、消費者だけでなく、従業員のことも思いやります。「ここの職場は、農業では珍しい週休2日制で、高齢者や子育て中の人も働ける職場を目指しています」


「花は鮮度が命です。福岡の花は、福岡の人に買ってもらう『地産地消』が一番いい」と佐野さん。消費者に地元の花のことを知ってもらうために、交流イベントを将来的に企画しています。「従業員が喜びながら花をつくれば、消費者も喜んで花を飾ってくれるはず。子どもでも簡単にできるフォトフレームづくりも楽しいですよ。やりたいことが多すぎて…」と夢が膨らみます。
「地元に戻って、一次産業がもうからないと地域は発展しない、という思いがより強くなりました。農業を軸に、暮らしやすい環境づくりを進めていきたい」と意欲を燃やす佐野さんでした。


【お問い合わせ先】
有限会社グロウテック
電話:0947-23-0050