日本のバラ育種家の間で今もっとも注目されている棚町満(たなまちみつる)さん。福岡県大刀洗町にある『たなまち園芸場』を営んでいる。
国内で登録された花の新品種の中から最も優れた品種を選ぶ審査会「ジャパンフラワーセレクション(JFS)」において、2016年に彼が出品した『セブンスターローズ』を皮切りに、『エルヴェドゥフランソワ』『ピンクメイプルローズ』『ブライダルメイプルローズ』『レッドワイン&ローズ』が、毎年連続でベスト・フラワー(優秀賞)もしくはフラワー・オブ・ザ・イヤー(最優秀賞)に選ばれるという……とても凄い方!
祖父の代から受け継ぐ農園は約2000坪。バラは毎年70万本が出荷され、そのほとんどは棚町さんが育種したオリジナルの品種ばかり。登録品種は出願・申請中も含めて現在13種。しかし実際には数え切れないほどの種類があるんだそうです。
棚町さんが目指したのは、大輪系ではなく、中輪系の丸っこくて小さなかわいいバラで、1本の茎にいくつもの花をつけるスプレータイプ。何より大事なのは、花弁をしっかり掴んで花を散らさない丈夫なガクと、花をふわふわと揺らすことができるしなやかな茎だそうです。それはブライダル用として花屋さんの現場スタッフから聞いた要望を、棚町さんがしっかり受け止め、気の遠くなるほどの交配作業を重ねながら追求してきた棚町オリジナルの
特長です。
棚町さん自身、農大卒業後フラワーデザインを学んだ後、最初は花屋になろうと思っていたが、実家のバラ農家を継ぎ2000年頃から独学でバラの育種にはまったそう。父親の敏隆さんは既存のバラを生産する農家でしたが、満さんは当時まだ珍しかったクラシックローズにこだわり、新たな市場を開拓しようとしていました。
ですが最初はなかなかうまく芽を出すこともできず、失敗を繰り返す日々。そんな時に出会ったのが、当時、JA全農ふくれん技術顧問だった松川時春先生と、ミニバラの育種家・山崎和子先生。松川先生には生産性や耐病性もきちんと追求しなければならないこと、山崎先生には「人の真似をせずオリジナルをつくりなさい」と育種家としての心得を学んだそうです。そんな二人との出会いのおかげで、独りよがりな狭い考え方から抜け出し、人々を魅了する素敵なバラを作り出すことができたのです。
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