魂を込めて栽培
よそにはないシクラメンを世の中に
千葉県の農家で花づくりの基本を学ぶ
秘けつは五感を研ぎ澄ますこと
福岡県内有数のシクラメン産地の久留米市田主丸町。中野正計さん(53)はシクラメンの栽培を始めて約30年になります。実家は花木栽培の農家でしたが、「シクラメンが栽培できるようになれば何でもできると」と周囲に強く勧められて、シクラメン生産を決意。19歳から2年間、千葉県のシクラメン農家で、住み込んで修行しました。「昼も夜も研修先の親方と一緒。辛いこともありましたが、花の育て方の基本をたたき込まれました」
現在はハウス17棟で栽培。妻の真由美さん(50)や12人の従業員と一緒に、手入れや出荷の準備に追われます。その中で、中野さんだけ薄着です。「産毛が温度を感じるくらいの肌感覚でいないとだめ。私が少し寒いなと感じたら、花たちも寒いんです」と温度や湿度を自分の皮膚で感じながら、管理に活かします。ハウスへの日射しの入れ具合も、天気に合わせてこまめに調整します。冬場はヒートポンプを動かしますが、ハウスが乾燥しやすくなります。「花は湿度がないと潤いがなくなるから、乾燥させないように気をつけています」と中野さん。ハウスごとに管理の仕方が違うため、いつも五感を研ぎ澄ましています。
「この人の花を」と言ってもらえるよう
魂を込めて育てるをつくる
中野さんは、シクラメンの葉っぱがスカートをふんわりと広げたような丸い姿になるように、一鉢一鉢手作業で整えていきます。中野さんが栽培する品種は、なんと約100種類! 珍しい品種も多いそうです。白と緑のフリルのついた花びらと、ギザギザの葉が特徴の「アイスプリンセス」。濃い紫の「江戸ノ青」は、全国でも数か所でしか作られていないレアもの。淡いピンクの「ピーチ」を手にした中野さんは、「心が安らぐでしょう」と目を細めます。
出荷しているのは主にギフト用で、オリジナルのラベルを付けています。「ラベルを見て、来年また『この人のシクラメンを買いたい』と言ってくれたらうれしい」と中野さん。自信作には「麗(うるわし)」ラベルも用意していますが、「年に1万鉢作っても30鉢できれば上出来」だそうです。
「売りたくないくらいのものが出来たら最高。そのために、魂を込めて育てています」と中野さん。「シクラメンを買った後は、ほったらかしはダメですが、甘やかして暖かくし過ぎてもダメ。一日一回、葉っぱをぽんぽんとなでてほしい」とアドバイス。ラベルの裏には「プロが教える攻略法」を書いて、手塩にかけた花たちを送り出しています。
※農園に直接訪問するのはご遠慮ください。
お花をお求めの際は、お近くの花屋まで!